銃砲刀剣類登録証(以下「登録証」)が最初に交付されたのは昭和二十六年(一九五一)だから、その歴史は今年で六十七年を迎える。既に二百五十万余点の登録証が交付されているが、六十七年間に登録証の内容は様々な理由により少しずつ修正されてきた。
例えば登録証の紙質であるが、当初は世相を反映し、質素な藁半紙に印刷された粗末なものであった。現在は上質な紙に加えて表面がラミネート加工され、修正や訂正ができないように工夫され、ほぼ恒久的なものに改められた。
記載内容も昔は「脇差」「脇指」「わきざし」などとまちまちな表示であったが、今では「刀」「剣」以外はすべて平仮名表示となり、長さや反りも寸尺からセンチメートルに統一されている。このように登録証も時代とともに少しずつ変化してきた。
今回、刀剣商にとって最も関心の高い「所有者変更届」について質問が寄せられたので、簡単に説明させていただこう。
登録証の裏面には注意事項が記されているが、昭和二十六年から交付された当初のものには、所有者変更について記述はない。今でこそ所有者変更届を出せば相続や譲渡が簡単にできると思われているが、当初はそうではなかった。あくまで申請者のみに所有が認められたのである。
しかし、時がたち、申請者が死亡したり、様々な理由により譲渡したい旨の要望が高まり、昭和三十年代初年から登録証を交付した都道府県の教育委員会に所有者変更届を提出することにより、相続および譲渡が可能になったのである。
登録証を人間に例えれば、まさに戸籍謄本のようなものである。交付した教育委員会としては、現在誰が所有しているか把握をしておかねばならない。そのために、相続や譲渡により所有者が変更になった場合、直ちに所有者の住所・氏名の確認が必要なのである。改正以降の登録証の裏面の注意書きには、次のように記されている。
一、銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続し(中略)た場合には、すみやかにその旨を登録の事務を行った都道府県の教育委員会に届けなければならない。
当時は期日の点において「すみやかに」とあり、やや曖昧な表現であったが、その後、昭和四十年に暴力事犯の多発化の傾向等に鑑み、「治安上の見地から」という理由で取り締まりの強化が図られ、そのときに「すみやかに」から「二十日以内」に届け出をしなければならないことになった。
その後、さらに、登録証裏面の末尾に次の文言が追加された。
一、以上の各事項に違反した場合は、法により懲役又は罰金の刑に処せられる。
現在、所有者変更に伴い、さまざまな問題が発生している。膨大な数の登録証の中には、わずかながらも不備なものがあることは事実である。
登録証の交付された刀剣類は、「美術の対象と認められたもの」と明記してあり、鉄の文化財と言えるものである。今後、日本刀を恒久的に伝えるためにも登録証は必要であり、過去に交付された登録証の中で不備なものは、所有者変更の機会に正確なものに訂正しなければならない。そのために、申請者および教育委員会等の諸官庁が協力し合い、変更届がスムーズに履行されることを節に願っている。
東京都教育委員会では平成二十一年六月付にて警視庁生活環境課との連名で「銃砲刀剣類の所持等に関する注意事項」を配布している。参考にしていただきたい。
(刀剣界新聞-第33号 冥賀吉也)

日本刀や刀剣の買取なら専門店つるぎの屋のTOPへ戻る