銘 井上真改 延宝二年八月日は、長さ約69.7㎝(二尺三寸)、反り約1.8㎝(六分)を測る刀です。造りは鎬造で庵棟を備え、反りは浅めでありながら中鋒がやや伸びている、バランスのとれた体配です。

延宝年間に鍛えられた井上真改の刀には、国指定の作品として重要文化財が二口、重要美術品が五口あり、この時期の作刀としては極めて高い評価を受けています。本作もまた、井上真改の作刀の中でも完成度が高い例の一つで、冴えた地鉄と整った刃文に加え、沸の美しさや金筋1の入り方にその力量がよく表れています。

真改は乱れ刃の作も残していますが、特に直刃調2の作には優れたものが多いです。また、彼が「真改」の銘に改めたのは寛文十二年八月以降であり、それ以降の作には裏銘を草書体で刻む形式が多く見られます。

地鉄に板目肌がよく詰んでおり、地沸が厚くつくほか、地景も頻繁に入り、明るく冴えた地肌を見せています。刃文は直刃調を基本としつつも、浅く大きなのたれが加わり、匂口は深く、小沸が厚く均一につく構成です。表裏の鎺元3から上部にかけては長く金筋がかかり、刃中の働きに豊かさを加えています。

帽子は直ぐにのび、小丸に返り、先端にはわずかに掃きかけが見られます。茎は生ぶで先端は栗尻、わずかに反りがつく姿です。鑢目は筋違で、化粧鑢4がかかっています。目釘孔は一つあり、表の目釘孔下から棟寄りにかけて「井上真改」と楷書体で銘が刻まれ、裏面には草書体で延宝二年八月日の紀年銘が入れられているのが特徴です。

※注1 金筋:刃中に光る線状の働き。
※注2 直刃調:直線的な刃文を基調とした様式。
※注3 鎺元:鎺が装着される刀身の起点部分。
※注4 化粧鑢:装飾性を備えた鑢仕上げのこと。

#井上真改 #刀工 #刀剣 #日本刀 #歴史

日本刀や刀剣の買取なら専門店つるぎの屋のTOPへ戻る