実阿について
実阿(實阿)は、『光山押形』によると現在の粕屋郡宇美町(博多から約12㎞の地)にあたる「宇美」に在住していた刀工です。実阿の作風としては、太刀の姿は長いものが多く、やや幅広のものがあります。総じて反りが深く、短刀は小振り内反(うちぞり)のものと、やや寸延びのものがあるようです。
地鉄は板目肌荒れ、やや肌立ち、地沸きがつきます。地斑ごころ※1があり、西蓮よりもさらに波平に近いものがある点が特徴です。
刃文は直刃のものが多く、小乱れもあります。刃中にさまで働きがあるものが少なく、多少の沸がつき、西蓮よりも沸が強いです。匂口が潤んで染みごころ※2があるものもあります。帽子は小丸または大丸ごころ※3に反っていて、掃掛ける※4ものがあり、彫物は実物にも押形にもありません。
茎(なかご)は太刀がわずかに反り、短刀には無反(むぞり)と浅く反るものと、ごくたまに振袖があります。先は刃上がり栗尻※5で、鑢は切りと浅い勝手下がりが多いです。筋違と鎬筋違(しのぎすじかい)※6のものもあり、目釘孔(めくぎあな)※7に三日月形のものがあります。
銘はすべて行書体で、「実阿」と二字銘のものが多いです。そのほかにも「実阿作」と三字銘のもの、「筑前国宇美実阿作」と長銘のものがあり、年紀と銘を書き下したものがあります。二字銘と三字銘のものは目釘孔の下部に打ってあります。
※1 地斑ごころ……地鉄に不規則に斑点のように見える模様があること。
※2 染みごころ……匂口がにじんだように見える様子。 ※3 大丸ごころ……帽子が大きく丸く返る形のこと。
※4 掃掛け……刃文の末端が掃いたようにぼやける形のこと。
※5 刃上がり栗尻……茎の刃側が上がり、末端が栗の形に丸くなる形のこと。
※6 鎬筋違……鎬筋に沿った斜めの鑢目。別名「切筋違」。 ※7 目釘孔……柄と刀身を固定するための穴。
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