長さは約75.8cm(二尺五寸)、反りは約1.5cm(五分)。鎬造で三ッ棟、重ねは薄めながら鎬が高く、反りは浅く、大鋒を備えた堂々たる姿の打刀です。

地鉄は板目肌がよく詰み、杢目1を交えて変化があり、地沸は厚くついています。所々に飛焼2がかかり、地景に富んだ表情を見せます。刃文は小のたれ3を基調に互の目を交え、足が入り、砂流し4や金筋もかかるなど、働きが豊かです。匂口は深く、沸5はやや荒めながら、冴えがあり、ゆったりとした印象を与えます。焼出し6は深く、堀川一門の特徴的な焼き方がよく表れています。帽子はわずかに乱れ込み、先は丸く返って掃きかけが掛かります。

茎は生ぶで、鑢目はこの刀工独特の逆筋違7。目釘孔8は二つあり、そのうち一つは忍び孔9です。茎の目釘孔下、棟寄りには、肩落ちの二字銘「國安」が刻まれており、特徴的な銘振りです。國安については、『田中家系図』のなかで「国広の末弟で、通称三太夫」との記載があります。藤代義雄氏の『日本刀工辞典(新刀編)』には、「國安は正宗の刀を偽作し、兄・国広の訴えにより罰せられ、領主鳥居家に預けられた。慶長七年に同家が磐城に移封された際に同行し、その子孫から和泉守国虎が出た」との一説が紹介されています(出典は不明)。

堀川一門の中で受領(官位)を持たなかったのは、國安と兄・國政、そして国徳・国盛ら数名です。国政は慶長五年、下別府の戦で島津家の佐土原勢と戦い、戦死したと伝えられており、刀工としての活動はごく短かったと思われます。

國安の作刀は古くから「現存数がきわめて少ない」とされてきましたが、実際には比較的多く残されています。ただし、この刀のような優れた出来のものは極めて稀で、一般に見られる國安の作は、堀川一門の中でも特に肌立ちが強く、やや粗く見える作が多い傾向にあります。

※1 杢目(もくめ):渦状や曲線を描く地鉄の模様。
※2 飛焼(とびやき):焼き刃の中に飛び出すように見える局所的な焼きの入り。
※3 小のたれ(このたれ):緩やかに波打つ刃文の一種。
※4 砂流し(すながし):刃中に見られる流れるような線。焼刃の働きの一つ。
※5 沸(にえ):焼刃部分に現れる結晶状の粒。粒が粗いと荒沸(あらにえ)と呼ぶ。
※6 焼出し:刃文の起点が茎側まで深く入る焼き方。
※7 逆筋違(さかすじちがい):通常とは逆方向に交差するやすり目の様式。
※8 目釘孔(めくぎあな):柄と刀身を固定するための穴。
※9 忍び孔(しのびあな):目釘孔とは別に補強目的などで設けられる小孔。

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