その他一派の刀工について
安吉と同時代に活躍した刀工は複数知られていますが、それらの現存作品は比較的少なく、実物が未確認のものも含まれます。これらの刀工に関する現存作は少なく、現物の確認が困難な例もあります。
弘吉(こうきち)について
弘吉は、銘鑑上では「左一派」に属するとされていますが、その具体的な系譜については明確ではありません。現存する短刀の中には、正平三年(あるいは貞和三年)の年紀をもつ作があり、これは大左一派の中でも比較的早い時期の作例とされます。観応元年紀の行弘の作に次ぐ古作と位置づけられ、暦応年間の大左による作品と比較しても、技量の面で見劣りしない出来を示しているのです。その作風には、良西や西蓮、実阿らと共通する要素も認められます。
特徴としては、暦応期の大左の作に比べて、地刃がやや明るく映り、また安吉の作例よりも地鉄の締まりが強い点が挙げられます。鍛えには流れ肌1が現れ、刃中には砂流し2や掃きかけ3といった働きが見られます。帽子4の返り方については、大左一派に典型的な突き上げる形とは異なり、より控えめで穏やかな形状をとっています。
※1 流れ肌:鍛え肌の模様が横方向に流れるように見える地鉄の特徴。
※2 砂流し:焼刃内に現れる細い白線状の働き。刃文に変化と動きを与える。
※3 掃きかけ:帽子(刃文の切先部)がぼかしを入れたように淡くなる現象。
※4 帽子:刃文が切先でどう収束するかを示す部分。
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