末の安吉とされる刀工による作品は、主に応永年間の短刀や脇指に確認されており、いずれも落ち着きのある端正な姿を備えています。ほとんどがすべて平造1で、造りは三ッ棟2が中心です。短刀は大左に比べてやや小振りな印象で、脇指には身幅がやや広く、寸法もやや長めで、反り具合も自然なものが見られます。

地鉄は板目肌を主体としつつ、やや肌立ちがあり、ところどころに流れ肌が交じる構造です。鉄色には黒味を帯び、地沸が細かくついているため、力強さと品の良さが同居するような風合いが感じられます。

刃文には、短刀では小湾れ3調や浅い互の目が焼かれており、脇指になるとやや大きめの湾れを基調とした乱れ刃4が見られます。全体的に沸5が強めで、刃中には砂流しやほつれといった変化が加わり、とくに脇指では荒沸6が目立つ傾向が強いです。

刃先の帽子には、左文字一派によくみられる形状がありますが、中には丸く穏やかに返るものも存在し、鋭さと柔らかさを兼ね備えた仕上がりとなっています。彫物には宗教的な意味合いが込められており、短刀には剣や護摩箸の彫りが施され、脇指には刀樋7が入れられるなど、細部に至るまで工夫が施されている点が特徴です。

茎は、浅く反ったものとほとんど反りのないものの両方があり、先幅は細くならず、全体として安定感があります。先端は刃上がりの栗尻で、鑢目には大筋違が施され、しっかりとした仕事ぶりがうかがえる刀です。

このように末安吉の作には、初代の伝統を引き継ぎながらも、時代の空気や個人の表現が加わった独自の魅力が見られます。控えめながらも丁寧に仕上げられた地鉄、変化に富んだ刃文、そして信仰の心を感じさせる彫物です。それぞれが調和し、確かな手技と精神性を伝える作品となっています。

 

※注1 平造:鎬がなく、刃と棟が平行に見える刀身の断面構造のこと
※注2 三ッ棟:棟が3面に面取りされた形状のこと
※注3 小湾れ:ゆるやかで細かい波形の焼刃のこと
※注4 乱刃:大きな動きのある変化に富んだ刃文のこと
※注5 沸:焼刃部分に現れる粒状の輝きのこと
※注6 荒沸:粒が大きく粗い沸のこと
※注7 刀樋:刀身に掘られた溝のこと。軽量化や装飾を兼ねる

 

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