脇指 銘 和泉守国貞は、長さ約44.5cm (一尺四寸七分)、反り約1.2cm(四分)を測る脇指です。造りは冠落し鎬造※1で庵棟、中鋒を備え、反りは浅く先反りの傾向が見られます。地鉄は板目肌を主体とし、流れごころに柾がかかる箇所もあり、地沸※2が細かにつき、地景※3を伴って明るく冴えた表情が特徴です。

刃文は小のたれを基調としつつ、互の目※4や丁子足※5を交えた構成となっており、匂口※6は深く、小沸※7がむらなくついています。刃中には砂流し※8がかかり、動きのある華やかな印象です。帽子※9は直ぐにのびて小丸に返り、やや長く、先端に掃きかけが見られます。

彫物としては、表の腰元に薙刀樋※10、裏には護摩箸※11が刻まれており、宗教的な要素も感じさせる意匠です。茎は生ぶで、先は栗尻、大筋違の鑢目が施され、目釘孔は一つ。孔の下、棟寄りには草書体で五字「和泉守国貞」の銘が刻されています。

国貞は晩年に出家し、「道和」と号したと伝えられています。入道後の作には草書体の銘が用いられることがあり、これを「道和銘」と呼ぶこともあります。

草書銘が確認される作としては、最も古いものが正保二年八月日(1645)の年紀を持ち、次いで正保三年、慶安三年(二月)の作にも見られます。一方、同じ慶安年間のうち、慶安二年八月日および四年二月日の刀・脇指には楷書銘が確認されており、書体には一貫性がなく、一定の規則は見られません。

この草書銘については、二代・真改国貞の代銘であるという説(藤代義雄による)が広く受け入れられていますが、実際には親国貞の晩年に複数の代作・代銘が行われた可能性も否定できず、そのすべてを真改によるものと断定することには慎重な姿勢が求められます。

※1冠落し鎬造:切先に向かって鎬(しのぎ)が段をつけて下がる形状の造り。
※2地沸:地鉄に現れる細かな粒状の結晶。
※3地景:地鉄中に見える線状・帯状の模様で、鍛えの際に生じる。
※4互の目:波形の湾れが交互に並ぶ刃文。
※5丁子足:丁子形の刃文から伸びる短い焼きの線。
※6匂口:地と刃の境目に見えるぼんやりとした光の帯。
※7小沸:匂口に沿ってつくきめ細かな粒状の結晶。
※8砂流し:刃中に現れる細長く白い流線。鍛えの影響による。
※9帽子:刃先に施された焼きの部分。焼きの形状により分類される。
※10薙刀樋:薙刀に見られるような、表面に刻まれた溝。重量調整や装飾のために施される。
※11護摩箸:護摩の際に使う棒を模した彫物で、信仰的な意味を持つ。

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