雷切丸(らいきりまる)

  • 脇指 無銘 (号:雷切丸)
  • 立花家資料館蔵
  • 長さ 1尺9寸3分(58.5cm)
  • 反り 8分(2.4cm)

 

 

雷切丸は戸次道雪の太刀で、立花道雪がまだ生地・豊後国大野郡藤北(大分県大野郡千歳町)の城にいたある夏、大木の下に席をつくり、昼寝しているところに雷が落ちてきたので、太刀を抜いて、雷を切った。道雪は足をやられ、差料の「千鳥」も焼け身となったが、雷を切ったとして以後「雷切丸」と改銘した。2尺(約60.6cm)足らずの大脇差で、以後立花家に伝来した。
鎬造、庵棟、中鋒、輪反り風に先反りとなる。鍛は小板目に流れ肌がまじり、刃文は直刃に地沸よくつき、匂口深い。宝暦9年(1759)に本阿弥家による「相州物の由」との鑑があるが、金筋や地景は目立たず、落ち着いた作行をしめす。大磨上で、茎は鑢目勝手下り、栗尻、茎孔三つ開く。差裏に金象嵌で「立花飛騨守所持」の後銘をほどこすものの、下三字を残して象嵌の金は抜け落ち、一部は茎に溶着する。

立花家の御腰物台帳の「御腰物由来覚」に雷切丸は記載がある。
一 雷切丸 無銘 壱尺六寸七分半(約50.7cm) 御脇差
右者 道雪様御差也。雷切与申訳者、鑑運公(道雪)未豊後国南郡藤北(大分県大野郡大野町)之御館に、被成御座候節、炎天之比、大木之下ニ御涼所御しつらい、此所江或時被遊、御昼寝候節、落雷せり。
御枕元江御立而被置候処之千鳥与いふ御太刀を被遊御抜合セ、雷を御切被成、早速御涼所を御立退被成候。夫より以来御足御痛候成、御出陣にも御乗輿ニ而、被遊御出候。然共御勇力御勝被成たるゆへ、常躰之者之達者より御丈夫ニ被成御座候。且又此御太刀最初者、千鳥与御附被成候得共、雷御斬被成候以後、其印御太刀有之故、夫より此御太刀、雷切与御改名被成候。
好雪様(二代:忠茂)御代、大膳様(忠茂の六男茂辰、初め喜之介、延宝6年、23歳にて早死)御逝去被成候節、御道具皆御払ニ相成可申之処、此御太刀も御払相成申之処、矢嶋石見殿御聞付被成、此太刀者払杯江差出候物ニ而無之、大切之御重宝ニ而有之候間、御取被成候由。
夫より矢嶋采女家持伝居申候処、鑑通公(七代)御代、宝暦九年卯之御発駕前、矢嶋周防進上之。但白鞘ニ而差上ル。三原之由承伝之処、同年六月御拭之節、本阿弥熊次郎江見セ申候処、相州物之由申候。
宝暦十辰年十二月、右雷切差上候。為代リ大和守安定御小サ刀被下之。但白鞘。雷切被成候年号不相知。追而吟味之上、書載之事。

立花道雪は、三七度の合戦で一度も遅れをとることなかった大友家屈指の猛将で、当主:大友宗麟を支え続け、衰退する大友家に最後まで忠義を尽くした。最初の名を戸次鑑連といい、若くして戸次家の家督を継いだ。二階崩れの変では大友宗麟を支持し、反対派の家臣を討伐する。以後、キリスト教に入れこんで政務を疎かにする宗麟に手を焼きながらも、大友家の勢力拡大に力を尽くした。若い頃に落雷に遇って下半身が不自由になったが、輿に乗って軍の指揮をとった。毛利家の策により、大友家に属する筑前の豪族たちが謀反を起こしたとき、吉弘鏡理らとともに鎮圧にあたり、立花城の立花鑑載を破った。その戦後、立花城の城督を任されて立花姓を称し、道雪と号した。耳川の戦いで大友家が大敗すると家臣の離反が相次いだが、道雪の忠義は揺るがなかった。しかし、そんな道雪も老いには勝てず、筑前柳河城攻めの陣中で病死してしまった。

立花家は九州の戦国大名大友氏の一族で、その後豊後戸次(大分市)にいて「戸次」を称するが、戦国時代の戸次鑑連(立花道雪)の代に、大友宗麟の家臣として筑前国立花城(福岡市)の城主となり、「立花」を称した。道雪には男子がなく、娘の誾千代に、大友家中の高橋紹運の嫡男:宗茂を婿養子としてむかえる。天正13年(1585)道雪は死去、弱冠17歳で宗茂が城主となった。天正15年(1587)、豊臣秀吉が九州征伐の軍をおこすや、宗茂は秀吉より直参大名の朱印状をもらい、秀吉に抗する薩摩島津勢と戦った。九州平定に功をあらわし、十三万二千石の柳河城主に取り立てられたのだった。しかし、関ヶ原役に西軍に味方し敗れ、所領を没収され失脚し、宗茂の雌伏の時代がくる。加藤清正が宗茂の人柄に惚れ、浪々の宗茂に一万石の扶持米をくれた。宗茂を慕う旧家臣は百人を超えたという。慶長7年(1602)、加藤家を去りふたたび浪々の身となるが、翌8年江戸城中に呼び出され、陸奥国棚倉(福島県棚倉町)一万石に取り立てられ、同15年、二万石を加増された。そして元和6年、旧城柳河への転封となった。

柳河城址の西方に柳河旧藩主立花家の邸宅がある。九州の鹿鳴館と呼ばれる明治の建物で、庭園松濤園が旧藩の面影を偲ばせる。現在、立花家のご子孫の方が料亭「御花」を経営されている。

(参考文献:日本刀大百科事典より転載・引用・抜粋)

(法量)
長さ 1尺9寸3分(58.5cm)
反り 8分(2.4cm)

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