長さはおよそ66.4cm(二尺一寸九分あまり)、反りはおよそ1.6cm(五分強)で、「村正 妙法蓮華経 永正十天発酉十月十三日」との銘が切られたこの刀は、長く鍋島家に受け継がれてきた品です。妙法村正の他に、千子村正、題目村正などという呼ばれ方もあります。
年紀として刻まれた10月13日というのは日蓮上人の忌日でもあり、“妙法蓮華経” の銘と合わせ、刀工の信仰心を表しているのではないかという見方もされています。

鎬造で庵棟、総体にしまった刀姿、表裏もとには草の倶利伽羅の彫刻が存在。地鉄は板目肌がやや柾がかって肌立っていて、刃文は匂本位である沈みごころの直刀、もとには腰刃風の乱れがあり、表裏共に揃っています。帽子は小丸風で、生ぶ茎、目釘孔一、そして十八字の銘が刻まれています。

古刀のほとんどは表裏の刃文が揃うことはありませんが、この刀工はしっかりと揃えた状態で焼いているのは特徴的だと言えましょう。同作のうち最も古い年紀として伝えられているのは文亀元年であり、この刀に刻まれた永正十年に至るまでには12年間の隔たりがありますが、銘の字に同じような特徴が存在するため、同じ刀工が作成したものとみて間違いないのではないでしょうか。
そして村正各代の中でも古いように見え、たなご腹形の茎が後代のもののように目立ちにくいのも特筆すべき点です。 

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