刀工における位列には、最上作/上々作/上作/中上作/中作という五段階(新刀、新々刀の分類)が存在します。中でも最も上位となる刀工らを意味するのが「最上作」です。
これらの等級は、古刀においては「本朝鍛冶考」、「掌中古刀銘鑑」をもとに、新党においては「新刀弁疑」等をもとに分類されています。
最上作の刀工は大変に技量が優れています。いつの時代であっても、高値での取引が行われており、現代においても価値は持続されています。「愛刀家ならば、一生のうちに1度は手に入れてみたい」とも言われる垂涎の名刀です。
刀剣史上の分類で、刀は「古刀」(平安時代末期~安土桃山時代)、「新刀」(慶長元年~安永九年)、「新々刀」(天明元年~明治九年)、「現大刀」(明治九年~)の四つに大きく分けることができます。それぞれの時代で少しずつ太刀姿の特徴が異なります。
古刀期の最上作では、鎌倉時代中期に山城国で活躍した「粟田口吉光」、鎌倉時代末期~南北朝時代に相模国で活躍した「相州正宗」、南北朝時代に越中国で活躍した「郷義弘」の三名工が「天下三作」として有名です。
中古刀期の最上作では、鎌倉時代後期に山城で活躍した「来国俊」、備前長船派で正宗十哲の一人である「長船長義」らが定められています。
末古刀期の最上作では、新選組副長土方歳三の愛刀として知られる「和泉守兼定」、室町時代後期に備前で活躍した刀工「次郎左衛門尉勝光」らが定められています。
新刀期の最上作では、「長曽弥虎徹興里」、「津田越前守助広」の二名工が東西の横綱として有名です。
新々刀期の最上作では、江戸時代末期に活躍した「山浦清麿」、水心子正秀や源清麿とともに新々刀期の江戸三作と名高い「大慶直胤」らが有名です。
次の位列表は、藤代義雄先生が定められ、柴田光男先生が補足・追加されたものです。
古刀 (天慶-文保年間、938-1318年) | |||
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最上作(位列順) | |||
藤四郎吉光 | 三条宗近 | 大原安綱 | 粟田口久国 |
一文字則宗 | 古備前友成 | 三条吉家 | 相州行光 |
粟田口国友 | 古備前包平 | 古備前正恒 | 粟田口国綱 |
古備前助平 | 古備前高平 | 備前光忠 | 一文字助宗 |
長船長光 | 藤源次助真 | 古備前信房 | 大原真守 |
一文字信房 | 豊後行平 | 粟田口国吉 | 新藤五国光 |
備前三郎国宗 | 粟田口国安 | 青江貞次 | 五条兼永 |
粟田口国清 | 粟田口則国 | 畠田守家 | 来国行 |
来孫太郎国俊 | 当麻国行 | 古備前遠近 | 古備前助包 |
青江守次 | 古備前助秀 | 青江恒次 | 一文字則包 |
一文字宗吉 | 一文字助房 | 番鍛冶吉房 | 一文字吉平 |
綾小路定利 | 粟田口有国 | ||
中古刀 (元応-長禄年間、1319-1461年) | |||
最上作(位列順) | |||
五郎入道正宗 | 彦四郎貞宗 | 郷義弘 | 来国俊 |
越中則重 | 左兵衛尉景光 | 筑州左文字 | 志津三郎兼氏 |
新藤次郎国広 | 長船兼光 | 長船長義 | 来国光 |
来国次 | |||
末古刀 (寛正-文禄年間、1460-1596年) | |||
最上作(位列順) | |||
和泉守兼定(之定) | 次郎左衛門尉勝光 | 与三左衛門尉祐定 | 長船右京亮勝光 |
千子村正 | 孫六兼元 | 長船彦兵衛祐定 | 平安城長吉(初代) |
新刀 (慶長-宝暦年間、1596-1763年) | |||
最上作(位列順) | |||
埋忠明寿 | 長曽弥興里 | 信濃守国広 | 野田繁慶 |
越前守助広 | 肥前忠吉(初代) | 井上真改 | 南紀重国(初代) |
山城大掾国包 | 一平安代 | 長曽弥興正 | 主水正正清 |
陸奥守忠吉 | 堀川国安 | 越前康継(初代) | |
新々刀 (明和-明治年間、1764-1875年) | |||
最上作(位列順) | |||
山浦清麿 | 大慶直胤 | 水心子正秀 | 左行秀 |
大和守元平 |