大阪歴史博物館において令和2年10月31日(土)から12月14日(月)迄、6階特別展示室において、特別展「埋忠<UMETADA>桃山刀剣界の雄」が開催されました。
埋忠(うめただ)とは、桃山時代から江戸時代にかけて活躍した一門の名前で、刀剣を鍛え、刀身彫刻を施し、鐔をも制作しました。実質的な流祖とよばれる埋忠明寿は、刀剣、刀身彫刻、鐔に長じ、その作品は刀剣界で高く評価されてきました。
埋忠一門の活動は刀剣や鐔の制作のみにとどまらず、古い名刀の磨上げや折返銘・額銘などの仕立て直しや、本阿弥家よって鑑定された極めや所持者の名を刻した金象嵌銘の嵌入作業、あるいは鎺などの金具の制作や名刀の記録作業など、名刀に関連して幅広い彫金加工にも従事していました。こういった作業には明寿をはじめとする埋忠工房が全体として行っていたと考えられています。
今回の展覧会においては、従来より高い評価をえていた埋忠一門の刀剣・刀装具が紹介されると同時に、埋忠一門がてがけた、仕立て直しや金具制作、名刀の記録といった活動にも注目し、往時の時代的背景からその実像を探るものです。埋忠一門のこれほどの大規模な展示は昭和42年(1967)に東京国立博物館において故・小笠原信夫先生が特集陳列を行われて以来の半世紀ぶりとなり、国宝7点、重要文化財15点、重要美術品6点を含む、名刀、鐔、刀剣関連文書など約90点が展示され、桃山時代の京都において新しく、そしてみずみずしい造形を刀剣・刀装具にもたらした、埋忠一門の多彩な活動振り返ることで、埋忠一門が現在に残した影響の大きさが改めて評価されています。

埋忠一門の作品では、明寿の刀剣が重要文化財2振、重要美術品2振を含む10余振、刀装具では重要美術品1点を含む5点が展示され、ほかに一門が制作した刀剣や刀装具が数多く展示されていました。
展示方法としては埋忠一門の刀剣の作品には殆どのものに濃密な龍図や不動明王図の彫物が施されており、それが表裏におよびます。いくつかの作品は独立の展示ケースに展示され表裏を観察することが可能となっておりました。ライティングも地鉄や刃文と同時に、彫物が見やすいように調節されているようでした。刀装具も独立ケースや裏面に鏡が設置されて、片面のみではなく両面を観察することができる画期的なものとなっておりました。

相州物の正宗・貞宗・江義弘・則重・志津らをはじめとする享保名物を含む数多くの名刀が、埋忠刀譜に所載するものはその写しとともに展示されていました。埋忠一門により制作された鎺は刀の傍ら、あるいは数個をまとめて独立ケースに展示されていました。埋忠鎺の薄手な肉置・金色・縦横の鑢目・形状の柔らかさといった特徴や、台座、底部の針銘・棟内側に穿たれた丸鏨まで鏡や拡大鏡の設置が駆使されて、本来であれば手に取らなければ確認することが出来ないような箇所までも観察することが可能なように様々な工夫が施された展示方法となっており、展示担当の方の埋忠作品を余すことなく見せるという熱意のようなものが感じられました。
実際に、埋忠一門の刀剣や刀装具といった個々の作品のみではなく、鎺をはじめとした金具類、磨上げや金象嵌銘にも視点をおいて見学することによって刀剣が総合芸術であることを改めて認識する思いがしました。

大阪会場限定の展示品として下記の11振がされ、なかには昭和期に展示されて以来となる30余年ぶりにお披露目された名刀も含まれており大きな話題を博しています。

太刀 銘 国行(来)(号:明石国行)(国宝)
太刀 銘 国綱(粟田口)
太刀 銘 光忠(重美)
太刀 銘 備州長船住景光(重文)
太刀 銘 国行(当麻)(国宝)
太刀 銘 大和則長(重美)
刀 磨上銘 加祢ミツ(兼光・かねみつ)/浮田左京介すり上つねにこれを
刀 銘和泉守兼定作/大永二年二月吉日源親忠
太刀 銘 日州古屋之住国広山伏之時作之 天正十二年彼岸/太刀主日向国住飯田新七良藤原祐安(号:山伏国広)(重文)
刀 銘 越後守藤原国儔
刀 銘 阿波守藤原在吉

(大阪展)
会期:令和2年10月31日(土)~12月14日(月)
火曜日休館 11月3日(火・祝)は開館、11月4日(水)は休館
開館時間:9時30分~17時(会期中の金曜日は20時まで)
ただし、入館は閉館の30分前まで
会場:大阪歴史博物館 6階 特別展示室
大阪市中央区大手前4-1-32

(東京展)
会期:令和3年1月9日(土)~2月21日(日)
会場:刀剣博物館
東京都墨田区横網1-12-9

特別展の開催に合わせて、出品されている「埋忠刀譜(うめただとうふ)」(刀剣博物館蔵)をクラウドファンディングにより複製するプロジェクトも実施されています。目標金額は1000万円(2020年12月21日まで)、支援1万円で複製本1冊、2万円で複製本2冊(うち1冊は図書館に寄贈)となっております。
https://umetada2020-2021.jp/project.html

また、人気ゲーム「刀剣乱舞 -ONLINE-」とのコラボレーションや、明石国行、太鼓鐘貞宗、桑名江、山伏国広、毛利藤四郎、博多藤四郎ら刀剣男士のモチーフとなった刀剣が展示されたことでも大きな話題となりました。

(刀剣界新聞-第57号 冥賀亮典)

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