豊前江(ぶぜんごう)

  • 指定:重要文化財
  • 刀 無銘 江義弘 (名物:豊前江)
  • 長さ 2尺2寸5分(68.2cm)
  • 反り 5分(1.5cm)

豊前江は越中国松倉郷に居住した義弘の作と伝え、江義弘の作中最も華やかな出来である。豊前江は江のなかではやや作風を異にしており、すなわち身幅、刃先は尋常な姿をしているが、鍛えは小板目に杢交じり、地沸つき、刃文は互の目、のたれ、丁子を交えて出入り深く、処々鎬にかかっており、帽子は沸崩れて掃きかけている。異例の作風を示しているが、総体に他の同作に相通じ、同作中の優品である。長寸の太刀を磨上げて刀に直したものである。豊前江の号のいわれは明らかでないが、豊前国小倉藩小笠原家に伝来したものである。
形状:鎬造、庵棟、重ねやや薄く、中鋒の刀である。鍛え:小板目肌極めてよく約み、地斑交じり、地沸細かにつく。刃文:湾れに互の目交じり、足・葉頻りに入り、所々に金筋かかり、表裏ともに物打上が一段と華やかになる。総体に匂が極めて深く、小沸がよくつく。帽子:乱込んで掃かけ、金筋かかる。茎:大磨上、先栗尻、鑢目切、目釘孔一。裏に「豊前江」と朱書がある。

重要美術品 昭和12年5月27日認定 認定時所有者 東京・小笠原忠春氏
重要文化財 昭和31年6月28日指定

郷義弘については本間薫山先生がその著書である「正宗とその一門」に詳しく記されている。
以下の括弧内は同書よりの抜粋となる。
「義弘即ち江の作域を知るにはまづ稲葉江(或は富田江)、村雲江、松井江を見るべきであり、江の作風を十分会得して終りに、豊前江をみるべきであろうことを前言する。この作の現存するものはみな大磨上の刀で、信ずべき短刀を見ない。刀は身幅広く切先延びるもの(例:富田江)、身幅、切先尋常のもの(例:桑名江)切先少し延びるもの(例:五月雨江)、やや細身のもの(例:東京国立博物館蔵)があり、みな庵棟である。鍛えは小板目つまるもの(例:稲葉江)、殆ど柾目のもの(例:村雲江)、板目柾目交るものがあって、地景入るが正宗、則重程にあらわなものはみない。みな地沸よくつき、正宗、則重のごとくには荒沸が目立たない。刃文は小のたれを主調として浅く乱れるものが多く、(例:稲葉江)、この際は匂殊に深く小沸つき、砂流しは比較的に少い。又直刃、のたれ、小乱交るもの(例:村雲江)に一段と沸が目立ち、砂流し、ほつれ、打のけ等が頻りにかかるものもある。中には小沸出来の直刃がしまり、足・葉入る(例:松井江)ものもある。但し足・葉は上記のいずれの刃文にも入る。しかもいずれの刃文も焼深く、殊に物打から帽子にかけて著しく、一枚帽子もある。帽子は総じて下の働きよりも素気なく、浅く乱れ込むものが多く、小丸ごころのものもあり(松井江)、尖りごころ、火焔ごころもあり、多少とも掃掛けている。豊前江の刃文は互の目、のたれ、丁子ごころの刃を交えて出入深く、所々鎬地にかかり異例である。彫物は樋以外のものはなく、稲葉江には、樋先下り、深く巧みな棒樋があるが、総じて樋のないものが多い。」

(参考文献:日本刀大百科事典より転載・引用・抜粋)

(法量)
長さ 2尺2寸5分(68.2cm)
反り 5分(1.5cm)

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