銘鑑によると、正家はその祖を奈良時代の天平の頃、その後に精彩を欠き、中興の祖を徳治の頃の正家としています。徳治は鎌倉時代の終わり頃(1306~1308)の元号であり、備前でいえば、真長・景光などの時代にあたります。

古三原と称される鎌倉末期から南北朝期の作刀のなかで『正家』銘の物は極めて少なく、むしろ普通見るところは正広銘に古香があるものが多いです。しかし、この太刀はそれらの正広作に比べて一段と古く見え、しかも技術も優れています。すなわち銘鑑にいう初代正家がこれで、その子あるいは門下に正広があるとする由縁でしょう。

御物とは、天皇家に伝わる所蔵品のことです。『太刀 銘 正家』はかつて御物とされていましたが、1989年(平成元年)に国庫へと寄贈され、旧皇室御物と呼ばれることになりました。

 

『太刀 銘 正家』の長さはおよそ71.3センチ(二尺三寸五分二厘)、反りはおよそ2.9センチ(九分五厘です。鎬造で、庵棟、重ねはやや薄目、鎬のやや高い造り込み。元来は腰反りが高く踏張りある太刀姿であったと考えられます。磨き上げながら今もなお比較的姿が良いです。

鍛は板目で、流れて柾がかり、地沸きがついて、総体に白けごころがあります。この派の特色を示し、刃文は中直刃調に小互の目交じり、匂い深く小沸きつき、ところどころに砂流しがかかり、帽子はわずかに湾れこみ、掃掛けてすなおに返り、二重ごころとなっています。茎は磨き上げて目釘孔が二つ、先切り、わずかに勝手下がりの旧鑢目を残し、そこに棟寄りに大振りながらやや細鏨に「正家」と二字の銘があり、特に「正」の字にすこぶる特色があります。

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