この『刀 無名 伝則重』は、もともとは秋元但馬守家に伝わる一品でした。

長さがおよそ76.4cm(二尺五寸二分)、反りがおよそ1.9cm(六分四厘)です。鎬造、庵棟、中鋒で、わずかに延びごころが見られ、比較的に身幅があります。他の太刀と比べて、全体的にやや豪壮な姿といえるでしょう。

地鉄は板目肌流れごころで、大肌交じり。肌立ちは地沸よくつき、地景しきりに入り、地班が見られます。刃文は湾れに小乱、小丁子交じりで、足や葉がよく入り、匂深く小沸叢なく厚くつき、金筋がしきりにかかっています。帽子は直ぐに丸く、先掃掛けて沸つき、匂が深いです。茎は大庵上げで、先は浅い栗尻のほとんど切りに近い状態。鑪目は浅い勝手下がりとなり、目釘孔は3つです。

 

銘は切られておらず、いわゆる『無銘』です。しかし地刃の出来は抜群であり、特に匂口は他の有銘作と比べて明るく冴え、刃縁にも締まりがあります。刃中の働きも素晴らしく、出来のよさでいえば有銘太刀二口もこの刀にはおよばないほどです。

さらに地の作刀には棒樋が多くあるのが通常ですが、この刀にはその特徴が見られません。地鉄も則重の典型とも称すべき出来ですが、やや落ちついた傾向にあり、地景もやや底に沈んでみえます。刃文も、他の銘則重作の太刀や短刀に比して、やや小出来といえます。

とはいえ、則重以外には鑑することができないほどの特徴的な作風を示しており、見事というほかありません。さすが名工と名高い則重の名に恥じないものです。

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